地下茎はいつ伸びるのですか。

[園芸相談センター]の過去ログです

赤鷽 【関東】 2013/10/10(木) 09:22:01
ヤナギランの復元活動を行っております。
実生から苗つくりしスキー場へ植え付けております。試行錯誤で育苗等行って来ました。
質問ですが、ヤナギランは地下茎で茎を繁殖しております。この地下茎はいつ頃成長するのでしょうか。また、新芽はどのような場所を選択してでるのでしょうか。

あいらん童 2013/10/10(木) 23:19:18
いかなる植物であっても野生種の復元活動はたいへんなご苦労があることと推察いたします。

一口に自生地の復元と言いましても、現地で採種された種子からの育苗でないと「遺伝子汚染」という問題を含んでいることは御存じかと思います。また、人工的環境で育苗しているうちに自生地にはない病原菌や害虫に感染してしまい、それもろとも自生地に持ち込むことによって、自生地本来の植生にダメージを与える懸念があることも昔から言われていることです。

私の在住する新潟県では、人工交配種の雪割草(ミスミソウ類)を本来の自生地に植えて、自然植生の復元活動だ、などと勘違いしている「遺伝子汚染運動」が行われがちです。もっとひどい例では、サギソウの自生地に、斑入りの園芸種(たいていウイルス病に罹患している)を植えて、いいことをした気になっている人さえいます。一度失われた植生を復元することはいかに大変なことか、私たちにできることはどこまでなのか、といつも考えさせられます。

さて、地下茎の成長時期とのことですが、ヤナギランの実生はしたことがあるのですが、地下茎の成長過程をつぶさに観察したことはありません。あくまで参考情報ですが、ほかの地下茎を持つ植物、たとえばチゴユリとかホトトギス類などからの類推では、新芽発芽後の春から成長は始まっているように思えます。

地下茎は先端に芽があり、伸び始めのころは一般にたいへん傷みやすい状態です。なので、たいてい地下茎がある植物を移植するのは、葉が枯れたころ=完全に地下茎と芽が完成しているころ=以降、春の発芽前まで、が一般的です。冬の寒さが厳しい山に移植するとしたら、秋よりは早春のほうが無難かもしれません。

新芽がどのような場所を選択しているかについてですが、障害物がない限り、地下茎の長さ以内の範囲で、どこでも適当に出てくるような気がします。ここはあくまで気がするだけです。

ヤナギランですと、植栽が活着してからも、自然遷移を止めて裸地を維持するにはどうすればいいかなど、長い目で見た課題もありそうですね。

ばんざいうさぎ 【北海道】 2013/10/13(日) 03:16:48
自分の経験から言うと、地下茎の成長期は地上部が成長しているのと同時と思います。蕾が色づいて来た頃に「丈夫なので大丈夫」と株分けして譲っていただけた物(根を湿らせたミズゴケで包んで3日おいた後)を移植した事がありますが、分けた時に根自体がとても少なく一応移植には成功したものの秋まで根を多く出す方にだけ専念していたらしく地下茎はほとんど伸ばせなかった様で、次の年に花は咲きましたが、体力を消耗したのか枯れて次の年は出てきませんでした。(当地は厳冬地で冬は雪に埋もれ寒さで根がほとんど伸びない)
これが最初から根が多く付いていたり冬は温暖な所なら移植後から冬までもいくらか地下茎が伸び、翌春に地下茎の所々から数か所芽吹いて生き延びてくれていたと思います。

ヤナギランの地下茎は環境が良いととても良く伸び良く殖えます。先日テレビの番組(確か国営放送で放映の海外のドキュメンタリーあたりと思います)で見た海外の火山に生えるヤナギランは、噴火からしばらく経った火山灰が真っ黒く分厚く積もっているだけの場所で、余所から風に乗って飛んできた種子から発芽して育ったものがぽつぽつと生えて花が咲いており、掘ってみると一株から一本の地下茎が2メートル以上も伸びていました。

好んで生える環境は、そのような火山灰が積もって何年か経ちまだ他の植物がほとんど生えていない所や、英名の「ファイヤーウィード」という言葉が表す様に野火が起きてほとんどの物が燃え尽くしたあとの土地にいち早く生えて殖え、すぐに大群生を成すそうです。
湿り気の多い場所も好むそうで、当地では湖に迫った斜面の水面から3メートルくらいの位置(斜面を横切る道路わき)に良く群れて咲いています。

こういう環境を好む植物は他の植物が徐々に増えてくると大抵自然に徐々に減ってきて植生が豊富になれば自然に消えます。環境の悪い所にいち早く生えて、その場所に将来他の植物が生えやすくなる様に土に変わる有機物等を堆積させれば、だんだん自らの好みの環境ではなくなり、その場での自生はやめて(いずれ枯れる)毎年綿毛付きの種子を他の遠い場所に飛ばしたり、その場の土に落ちて地中で深い眠りにつき(休眠種子。何十年と待ちます)、また発芽・生育できる好条件(野火が起きたり)に成るのを待ちます。ヤナギランの他にシラカバなどもこういう性質の植物で「パイオニアプランツ」と呼ばれ、そういう植物は同じ場所ではあまり長い年月は生えていられません。
よほど運よく都合の良い環境に保たれない事にはシラカバも長くは生えていられず大木に成る事は稀です。普通シラカバの太い大木があまり見られないのは他の樹木に場所を奪われて枯れてしまうため。
ただし、私の実家のある街には例外的に凄い大木が何本も自生しています。家は海岸沿いの崖の上の縁近くに、幅狭く長距離の範囲で生える国有林の側にあります。その林は崖の上に表土が浅目に溜まっている状態で内陸の高い所から緩い勾配で地下の岩盤伝いに水が流れて来て林の土に適度に水が溜まります。環境が厳しいのや他の植物が侵入しづらいのかシラカバにとっては生きやすい環境らしく元々は原生林で遊歩道を作るのに笹を刈るなど少し手を加えているものの大木はそのままで、他の場所では見た事のない凄い規模のシラカバ大木が沢山生えています。

復元活動において、ちょっと心配に思う点があります・・・。(復元に反対している訳ではありません)
おそらくヤナギランの好む場所は、野火の後に旺盛に生えてくるワラビの好む環境に似ているのでは?と感じます。スキー場に今現在ワラビが生え春には沢山芽が出てくる様であれば環境自体は合うと言えるかもしれません。でも、もしすでにワラビが沢山生えているなら復元を試みヤナギランを殖やしたい場合、「ワラビがすでに沢山生えている事」がおそらく一番の問題になります・・・。
同じ環境を好む場合どちらも性質が強い植物だと勢力争いが起こり、弱い方はなかなか殖えません。先住植物に、もしもアレロパシー物質を出す性質があれば復元の前にはまず先住植物をあらかじめ全滅させ、アレロパシー物質を消滅させておかない事には目的の植物を後から植えて殖やすのは かなり難しいです・・・。

今現在もしワラビの自生があるのなら、おそらくワラビの方が圧倒的に数も多く自生年数も長いと思うので、活動の内容次第ではヤナギランを何度移植しても思うほどには殖えない恐れが・・・。でも、ワラビの駆除というのはもし株を抜いても土内には長年落ちていた胞子が多く混ざっているでしょうし、また生えない様に抑えるのは難しいかと・・・。

ヤナギランの復元後の維持で一番理にかない最適な方法は奈良の若草山の様に人為的に、何年かおきにでも野焼きをするのが効果的なのでしょうが、現在こればっかりは綿密な計画と関係機関からの許可が必要であり、いつでもどこでも出来るものではありませんよね・・・。
ただ、野焼きが出来る所だと自生植物が長年良好に保っていける傾向はかなり強いと思います。昔は海岸線の砂丘などの原生花園の側に鉄道が通っていれば走って行くSLの煙に混じって撒き散らされる火花が枯れ草に引火する事もあったそうで春先の乾燥で野火が起き、そのおかげで観光で訪れる人の靴や車のタイヤが運んでくる雑草や、害虫の卵もうまく焼かれて駆除出来、花の開花時期は見事な花の群生を保つ事が出来たそうです。
SLが走らなくなってからは駆除されずに蔓延し雑草と害虫の害でかなり荒廃しているところは多く、北海道の知床に近い「小清水原生花園」という所は特に酷くて現在昔の開花規模への回復を目指し人為的野焼きや家畜の放牧を行っています。

もし、スキー場にワラビがほとんど生えて無いという環境なら何らかの理由があるわけで(特に現在の樹木や植物の植生変化や、環境や水の関係)、復元をめざしても、もうヤナギランのその場での役目は終わっていて移植までしても生育自体が難しいケースもあるかもしれません。もしかすると土環境や水の保ち方からの根本的な改善をしない事には移植しても消えやすいかもということです・・・。

特にスキー場などの人為的に環境が変えられた斜面は植生なども短期間で変化してしまい、土が圧雪の為に固くなっていたり保水性を保つ為の木の葉を落としてくれた樹木が無い事からすでに土自体が痩せ保水性が低すぎたりで、湿り気味の土環境の好きなヤナギランの場合、上の方に植えるほど思ったほど殖えない傾向は強くなる可能性もあります・・・。

*復元のプロジェクトの提案が出てから、ヤナギランはパイオニアプランツであり、いつまでもその地に生える事や他の植物との共存が難しい植物である事はあらかじめご存じだったのでしょうか?

*まずは、復元させたい場所の土環境や水はけの調査は行い大丈夫との調査結果は得られているのでしょうか?

*復元を諦めず、少なくとも数年に一度くらいの野焼きを行う事は可能であるか?
もし、活動の主導者の方がこれらをクリアしないうちから復元をめざしているのでしたら、場合によっては最悪徒労に終わるかもしれません・・・。

その植物の性質を知らずに(「昔は生えていた」=「復活するだろう」とは限らないのです・・・。)の活動は効率悪く年月がかかる割に成果がうまく出ない事も・・・。まずはいろいろな面から検討し改善できるかがとても大切です。
まずは「ファイヤーウィード」「パイオニアプランツ」などのキーワードで海外の物も含めて文献など詳しい情報を集め、自生のサイクルなどをご確認なさってみて下さい。


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